運動器の障害のために移動能力の低下をきたして、要介護になったり、要介護になる危険の高い状態のことです。
正式名は「ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ)」運動器症候群ともいいます。
ロコモは筋肉・骨・関節・軟骨・椎間板などといった運動器のいずれか、または複数に障害が起き、歩くことや日常生活に何らかの障害をきたしている状態です。
いつまでも自分の足で歩き続けていくために、ロコモを予防し、健康寿命を延ばしていくことが必要なのです。
人間の身体は機能ごとに分業をしています。酸素を取り入れ二酸化炭素を排出する"呼吸器"(気管や肺)、酸素や栄養や老廃物などを運ぶ血液を流す"循環器"(心臓や血管)、食物を消化・吸収する"消化器"(胃や腸)などは良くご存知でしょう。
同じように人が自分の身体を自由に動かすことができるのは、骨、関節、筋肉や神経で構成される"運動器"の働きによるものです。骨、関節、筋肉はそれぞれが連携して働いており、どれかひとつが悪くても身体はうまく動きません。
以上の項目はすべて、骨や関節、筋肉などの運動器が衰えているサインです。
1つでも当てはまればロコモの心配があります。
0を目指してロコトレ(ロコモーショントレーニング)を始めましょう。
ロコモにはいろいろなレベルがあり、十分に歩ける人と、よく歩けない人では、ロコトレのやり方も違ってきます。
自分に合った安全な方法で、まず「片脚立ち」と「スクワット」から始めてみましょう。
ポイント1 姿勢をまっすぐにしましょう。
ポイント2 支えが必要な人は、十分注意して、机や手や指をついて行いましょう。
(指をついただけでもできる方は、机に指先をついて行います)
注意:床につかない程度に、片脚を上げ、転倒しないように必ずつかまるものがある場所で行いましょう
ポイント1 動作の最中は息を止めないようにしましょう。
ポイント2 膝に負担がかかり過ぎないように、膝は90度以上曲げないようにしましょう。
ポイント3 太ももの前や後ろの筋肉にしっかり力が入っているか、意識しながらゆっくり行いましょう。
ポイント4 支えが必要な人は、十分注意して、机に手をついて行います。
中高年の男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリックシンドローム(メタボ)、またはその予備軍といわれています。メタボは動脈硬化を進行させ、心臓病など命にかかわる病気を招く危険性がありますが、怖いのはそれだけではありません。肥満になると、体重が増えた分、腰や膝に負担がかかり、ロコモの原因になるのです。
一方、ダイエットや食欲不振などによって栄養が不足すると、骨や筋肉の量が減ってしまいます。とくに若い女性の極端なやせ志向や高齢者の低栄養状態には要注意。ロコモに陥らないためには、メタボや痩せすぎにならないよう食事に気をつけることが重要です。
「5大栄養素」を1日3回の食事からバランスよく摂ることが大切です。
炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルのいわゆる「5大栄養素」。この5大栄養素が運動器の機能を保つのに欠かせない栄養素です。これらの栄養素を毎日3回の食事から補給することが大切になります。
料理は大きく分けると「主食」(炭水化物を多く含むご飯やパン、麺類など)、「主菜」(メインとなるおかず:タンパク質を多く含む肉、魚、卵、大豆製品など)、「副菜」(付け合わせのおかず:ビタミン、ミネラルを多く含む野菜、海藻など)の3つになります。1日3回の食事にこの主食、主菜、副菜を揃え、牛乳・乳製品や果物なども組み合わせると、5つの栄養素をバランスよく摂ることができます。
バランスのよい食生活のためには、栄養面に加え暮らし全体から食生活をとらえることが大切です。以下の「食生活指針」10項目を参考に、ロコモ予防に日々の食生活を見直してみましょう。
「健康寿命」という言葉をご存知ですか?
健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のことです。
平均寿命から健康寿命を引くと、男性は約9年、女性は約12年となります。誰もが最後まで、健康でいきいきとした生活を送るためにも健康寿命を守りましょう。
自立度の低下や寝たきり、つまり要支援・要介護状態は健康寿命の最大の敵です。そしてその要因の第1位は「運動器の障害」だということをご存知ですか?
要介護や寝たきりは、本人だけでなく家族など周囲の人にとっての問題になります。自分のみならずあなたの大切な家族や友人などのためにも運動器の健康を維持しましょう。
骨や筋肉の量のピークは20~30代です。骨や筋肉は適度な運動で刺激を与え、適切な栄養を摂ることで、強く健康に維持されていきます。弱った骨や筋肉では、40代・50代で身体の衰えを感じやすくなり、60代以降には思うように動けない身体になってしまう可能性があります。
また、筋肉や骨と同様に軟骨や椎間板にも適正な運動負荷が必要です。但し、過度なスポーツや過体重によって「負担をかけられすぎる」と、軟骨や椎間板は逆に傷んでしまうこともあります。また、痩せすぎていると筋肉や骨は弱くなってしまいます。肥満も痩せすぎもよくありません。
以上の症状に心あたりのある方や将来のロコモが心配な方、またロコモの可能性が疑われる方は、まずは当院までご相談ください。
ロコモティブシンドロームの正しい知識と予防意識の啓発のための活動を行なっている日本整形外科学会所属の専門医のことです。
医療法人社団 良保会 奥秋整形外科